女性社員対談
Talk Session : Women

決めつけすぎず、発想を切り替えることが大事。
仕事と出産・子育てとの両立は、働き方を考える上で特に重要なテーマのひとつです。KPMG FASの女性社員は、このテーマにどのように向き合っているのでしょうか。若手女性社員が子育て中の先輩女性社員に、ホンネで質問をぶつけました。性別に関わらず、ワークライフバランスを考える上でぜひ参考にしてみてください。

福留 遥Haruka Fukudome
ディールアドバイザリー
シニアアソシエイト
2017年入社。文学部英米文学科卒。新卒で金融機関に入行し、支店で営業・与信管理を経験する。クライアントの経営により深く携わる仕事がしたいと希望し、KPMG FASに入社。現在は主としてM&A・再生関連のビジネスデューデリジェンスや事業計画策定、業界調査業務などに広く携わる。週末の時間は友人と食事をしたり、映画を楽しんだりするとともに、自己研鑽学習に充てている。

名畑 志帆Shiho Nabata
ディールアドバイザリー
執行役員・パートナー
2007年入社。文学部英文学科卒。新卒で専門商社に入社。その後、大手コンサルティングファームを経てKPMG FASに転じる。現在は、業績不振企業に対する事業計画策定をはじめとした事業再生や、事業構造の再構築、グループ再編、組織・業務変革といった企業変革を幅広く支援。プライベートでは2014年に結婚し、翌年出産。1人の男の子の母親として仕事と育児を両立させてきた。週末はスポーツ教室に通う息子につきあって、練習の手伝いなどで忙しく過ごす。
完璧さを求めず、長い目で両立を考える
福留 M&Aや事業再生など、私たちはクライアントの経営における重要局面に携わることが非常に多いです。それが仕事のやりがいにもつながっているのですが、一方で責任のある仕事ですから、いつでも好きなときにお休みを取るというわけにもいかない場合もあります。ワークライフバランスの充実は誰にとっても大きな課題だと感じています。名畑さんはどのように仕事とプライベートを両立させてきましたか。
名畑 確かに仕事とプライベートの両立は簡単ではないと思います。当社に限らず、仕事をしていたら誰だって時間の制約は受けますし、自分の都合だけで動くこともできませんから。だからといってネガティブにならず、私は発想を変えてみました。
福留 考え方を変えたわけですか。
名畑 仕事とプライベートを50対50で均等の割合にしようとするから難しくなると思うんです。どちらも自分にとって大切な時間なのは間違いないのですから、無理にハッキリ切り分ける必要はないでしょう。実際、子供が自宅にいるときに、在宅勤務をしていれば子供が「ママー」と寄ってくることは避けられませんし。だから仕事とプライベートを切り分けるんじゃなくて、うまく融合させたいと考えています。そして1週間、1ヵ月、1年という単位で振り返ってみたときに、トータルでバランスが取れていたと感じられたら、それでOKと思うようにしています。
福留 例えば時間に縛られないということでしょうか。
名畑 時間での配分や短期的な結果にとらわれず、長い目で考えてみてはどうでしょう。そもそも私たちの仕事は時間で評価されるのではなくてアウトプットで評価されますから、自他ともに認められる成果が出せれば、時間に縛られることは少ないといえます。
福留 確かにそうですね。とはいえ、仕事に割ける時間が少なくなることに、焦りはなかったですか。
名畑 子育て中は、“仕事にかける時間”で勝負したら、勝てっこないんです。他の人と同量の時間をかけられないのは、仕方ありません。だから割り切って、成果で勝負することに徹するしかないですよね。
福留 確かに。でも、そうは言っても不安はなかったんですか。初めからそう割り切ることができたんでしょうか。
名畑 もちろん不安でしたよ。子育て自体が初めてのことですし、特に出産前は不安しかなかったです。私は息子が7ヵ月のときに保育園に入れて復職することにしました。そのときはシニアマネージャーだったので、どのように時間の使い方を工夫すれば両立できるか、上司にも相談しました。早めに寝かしつけてその後に仕事を再開したこともありますし、試行錯誤しながら過ごしてきました。でも当時は、仕事も育児もどちらも中途半端なような気がして、辛かったです。ただ途中から完璧さにこだわるのをやめたら、楽になりました。今日はこれができればひとまずOK、明日はこれ、という具合に。
福留 例えば担当している案件がクライアントにとってクリティカルな局面に差しかかると、当然私たちも業務時間が長くなってしまう場面もありますよね。
名畑 確かに私も、横で息子を寝かしつけながらリモートミーティングに出席したこともありましたね(笑)。重要な会議などで遅くまで帰れないときなどは、夫と日ごとに役割分担を交代して対応しました。その際大切なのは情報の共有や、やらなければならないことの可視化です。我が家ではオンラインのカレンダーで夫婦の予定を共有していたので、こうした調整は比較的スムーズだったと思います。これは、夫婦ともに“仕事と家庭を両立させることが普通のことである”という共通認識をいかにもてるか、が重要ですね(笑)。
福留 とても参考になります(笑)。妊娠中は体調面等さまざまな観点で仕事との両立にご苦労があったのではないかと拝察しておりますが、どのように過ごされましたか。
名畑 幸いなことに、私にはつわりがまったくなくて、出産1ヵ月前まで普通に働いていました。でもこればかりは個人差があるので、医師や周りと相談しつつ無理のない範囲で、という答えになってしまいますが。

将来のライフイベントに備えて、女性こそ管理職をめざすべき
福留 私の当面の目標は、マネージャーに昇格することです。当社に限らずコンサルティング業界には女性が少ないのが現実ですが、女性の管理職として大変なことはありますか。
名畑 私はマネージャーになって良かったと思いましたよ。というのも、もちろんマネージャーになれば仕事の責任は重くなりますが、その分、自分で調整可能な要素も増えます。メンバーとのミーティングやクライアントとの打ち合わせなども含め、特に時間調整についての裁量を持てることが大きいです。この業界に女性が少ないことは事実ですが、だからといって気後れすることはありません。かつては私もクライアントから「女性のコンサルタントは珍しいですね」と言われることが少なくなかったですし、その分、早く名前と顔を覚えていただけました。良くも悪くも目立つのは確かだと思うので、それを上手に使えばいいと思います。
福留 マネージャーになることは自分自身の成長にもつながりますよね。
名畑 その通りです。視座が上がって、より広い視野でものごとをとらえられるようになったのは間違いありません。成長という点からも、次のステップへと進んでいくことをためらわないでいただきたいと思います。
福留 納得しました。
名畑 先ほど「子育て中は、時間で勝負したら勝てっこない」とお話ししましたが、つまり時間を有効に使えるという点でも、女性こそ積極的に管理職をめざすべきだと思うんです。そのためには、周りの人との信頼関係の構築が欠かせません。「名畑に任せたらここまではやるだろう」と思ってもらえるような、周りからの信頼を積み重ねておくことが大切だと思います。
福留 なるほど。チームのパフォーマンスを上げていくには1人ひとりの能力を引き上げることが必要ですが、実は私は今、その難しさに直面しています。私自身のリソースには限界がありますし。
名畑 チーム全員で全体観を共有するようにしてはどうでしょう。自分のタスクだけに目が向くのでなく、全員がチームのことを考えるようになれば、パフォーマンスも自然に上がっていくと思います。
福留 話は変わりますが、過去女性プロフェッショナルは更に少なかったかと拝察していますが、女性であることで他の男性スタッフを動かすことが難しいと感じたことはあったのでしょうか。
名畑 私は特に意識したことはありませんね。プロジェクトのゴールを定め、その達成のために逆算して、誰が何をすべきかを明確にすることに徹していました。そこに男女の違いは関係なかったと思います。
福留 男女の違いに関わらず、異なる価値観や状況下で動いているために当然意見の齟齬もあり得ることもありますし、相手にとって耳の痛いことでも、あえて言わなくてはならないこともありますよね。チームマネジメントの難しさの1つかと思います。
名畑 もちろんあります。あまりストレートに言い過ぎると相手によっては傷つくこともありますから、工夫は必要です。誰にでもプライドはありますから。私自身も「そこまで言わなくても」と思うような言葉を投げつけられたこともありましたし、反対につい勢いで言い過ぎてしまったこともありました。でも、このあたりは経験を重ねながら学んでいくしかないと思います。

日本再生への志を持った集団でありたい
福留 名畑さんご自身の、今後のキャリアビジョンについて教えてください。
名畑 私はこの仕事が好きですし、これからもずっと続けたいと思っています。さまざまな企業の経営課題に取組む醍醐味があるし、事業再生を通じて地域の産業や雇用を守るといった社会的な使命にやりがいを感じています。自分自身のキャリアだけでなく、そうした社会に与える影響も忘れずにいたいですね。
福留 同感です。
名畑 今後、企業の事業環境はますます複雑になっていき、課題も複雑さの度合いを増していくでしょう。そうした中でクライアントに寄り添っていくには、私たち自身も自己変革しなくてはならないと思っています。社会の変化を先取りして自分も変わっていくために、常に新しいことにチャレンジしていくつもりです。
福留 私自身はクライアントのさまざまな悩みにこたえるための経営コンサルタントとしての引き出しがまだ足りないと感じることがあるので、よりさまざまなプロジェクトへの経験を増やし、自分の引き出しを増やし、クライアントの変革・成長に貢献できるよう力を磨きたいと思っています。
名畑 大切なことですね。
福留 一方で、KPMG FAS自体については、今後どうあるべきだとお考えですか。
名畑 社会の変化に対応するためには私たち社員だけでなく、会社そのものも変わっていかなくてはならないと思います。そのためには新しいサービスを生み出すことも必要でしょう。先行き不透明な時代だからこそ、クライアント自身が認識していないような潜在的な課題を見つけ出し、顕在化させて解決していく取組みも必要でしょうね。
福留 より深くクライアントに入り込んでいくわけですね。
名畑 その結果が日本の企業を強くし、日本経済が再び立ち上がることにつながっていくと思うんです。KPMG FASがそんな志を持った人材の集団になれたら素晴らしいです。

恐れることなくチャレンジを楽しんでほしい
福留 ここをご覧になっている学生の皆さんへのメッセージをぜひお願い致します。
名畑 常に好奇心を忘れず、何ごとに対しても納得いくまでやりきる姿勢を大切にしてほしいと思います。仕事をする上では壁にぶつかることもあるし、理不尽な目に遭うこともあるでしょう。そんなときも自分で選んだ道ならば、投げ出さずに前へ進めるはずです。私自身も紆余曲折しながらここまできたという思いです。
福留 そうなんですか、意外です。
名畑 選択肢は常に目の前にいくつもあるんです。どれを選ぼうとも、合理的で前向きな選択なら後悔することはありません。想定外の出来事が起きても柔軟に対応する、しなやかさを大切にしてほしいと思います。
福留 私自身は金融機関から当社に転職してきたんですが、不安だらけの入社でした。というのも成果だけが問われるプロフェッショナルな世界ですから、果たして自分が生き残っていけるのか、まったく自信がなかったからです。そんな私でも今までやってこられたのは、当社が何にでもチャレンジさせてくれる懐の深い会社だったからだと思います。自分で選んだチャレンジだから苦しくても頑張れるし、最後までやり遂げられると思うんです。
名畑 確かにコンサルティング業界は、外から見ると敷居が高く、厳しい世界に見えるかもしれませんね。特にM&Aは高度な専門性を持ったプロフェッショナルだけが活躍できる仕事というイメージですから。
福留 だからこそ挑戦しがいがあると思うんです。学生の皆さんにも、恐れることなくチャレンジを楽しんでいただけたら嬉しいです。
名畑 KPMG FASの女性社員の割合は2割から3割といったところでしょうか。昔から見ればずいぶん増えたのは確かですが、それでもまだまだ少ないですし、もっと多くの女性に活躍してほしいと思っています。それが当社の多様性につながり、さらなる発展の原動力となるでしょう。女性が入社してくれたら、挑戦したいことは私が精一杯サポートします。
福留 私は後輩の皆さんをご飯にお誘いしますので、仲よくなれたら嬉しいです(笑)。そして私自身が少しでも皆さんのロールモデルになることをめざしたいと思います。
名畑 ぜひ皆さんのよきお手本をめざしてください。
福留 この先私も、さまざまなライフイベントを迎えることになると思うのですが、自分に両立ができるだろうかという不安は大きくなる一方でした。今日、名畑さんのお話を伺って、とても勇気づけられた思いです。“なんとかなる”じゃなくて“なんとかしてみせる”という気持ちになりました。ありがとうございました。
※記事の記載内容は、インタビュー取材時点のものとなります。